海外に関連会社がある企業が知っておいた方が良いのは、移転価格税制に関する知識です。
移転価格税制は、海外の関連企業と取引をする時に適用される制度なので、関連企業と取引することが多い会社にとっては、特に重要な制度です。
このような制度が特別に作られるようになったのにはしっかりとした理由があり、この制度があることによって、企業に適切な課税ができるようになっています。
知らない人にとっては複雑な部分もある制度ですが、基本的なことから覚えていけば、しっかりと理解することができます。
ここでは、このような移転価格税制の概要を解説します。
国外関連者との取引に課せられる税金の制度
移転価格税制は、国内の企業が国外の関連者と商品売買の取引などをした時に適用されることがある制度です。
国外関連者と売買をした時に特別な課税がおこなわれるのは、取引価格が通常の場合とは異なっているケースです。
通常の売買とは違う価格で取引をすることにより、国内の会社で発生した利益を海外の関連企業に移すことも可能であるために、こうした制度が設けられています。
この制度の適用を受ける売買では、例え通常とは異なる取引価格で売買がおこなわれた場合でも、通常の価格で取引がされたものとみなして、課税額が決定します。
こうした通常の販売価格のことを、独立企業間価格と呼びます。
例えば、ある企業が国内の他の企業から商品を1個あたり1000円で仕入れたとして、これを国外の企業に1200円で販売した場合を想定します。
この企業が国外の企業に販売するこの商品の通常価格が1400円であった場合、独立企業間価格も1400円になります。
上記の取引では、独立企業間価格で取引がされたものとみなされるので、国外の企業に商品1個あたり1400円で販売したものとして、課税額が計算されます。
国外関連者との取引価格が通常よりも安いほど、移転価格税制で課せられる税額も多くなります。
移転価格税制の対象となる国外関連者の範囲
移転価格税制の対象となるのは、国外関連者との間でおこなった取引です。
この場合に問題となるのが国外関連者の範囲で、こうした相手の範囲は法令で明確に決められています。
移転価格税制の対象となる国外関連者とは、法人との間に50パーセント以上の株式保有関係がある者などのことです。
実質的な支配関係がある場合にも、国外関連者に該当します。
役員の関係や取引の依存関係、もしくは資金に関する関係などで判断されます。
一つの法人に複数の国外関連者が存在する場合もあり、ある法人が国外の法人の50パーセント以上の株式を保有していて、その法人が同国の別の法人を実質的に支配しているような場合には、前者だけでなく後者の外国法人も、法人の国外関連者となります。
したがって、上記の法人がどちらの法人と取引をした場合でも、移転価格税制が適用されます。
国外関連者がいる法人が、他の無関係な企業を通して間接的に外国企業との取引をした場合でも、一定の条件に当てはまる場合には、その無関係の企業との企業は国外関連取引とみなされて制度が適用されるので、注意が必要です。
制度の対象となる国外関連取引にも法令の決まりがあり、資産の販売や購入、役務の提供などが該当します。
独立企業間価格を決定するためのさまざまな方法
移転価格税制で、企業の実際の取引価格と比較されるために使用される独立企業間価格は、さまざまな方法で計算することができます。
これらは国際的な機関が定めたガイドラインで認められている計算方法です。
特によく使用されているのは基本三法で、その中の一つが独立価格比準法です。
この方法では、企業が国外の関連企業と商品の売買をした価格を、第三者である企業と売買をした場合の価格と比較して、独立起業間価格を決定しています。
比較の対象として使用されるのは、企業が国外関連企業と取引をした場合と同じような条件で売買をしたものです。
販売した商品の数量なども考慮されて選ばれます。
こうした取引のことを比較対象取引と呼んでいて、移転価格税制が適用される国外関連企業との商品売買は、この取引の価格でおこなわれたものとみなして課税されます。
なお、独立価格比準法で使用される比較対象取引には、内部比較対象取引と外部比較対象取引の2種類があります。
独立企業間価格は再販売価格基準法という方法で計算することも可能で、これは比較対象取引の再販売にかかる売上の総利益率を、国外関連者との取引価格と比較する方法です。
原価基準法という方法で、独立企業間価格を決めることもできます。
まとめ
海外に関連企業がある会社が知っておいた方が良い、移転価格税制の概要について紹介してきました。
移転価格税制は法人が国外関連者と取引をする時に適用される制度で、通常の取引とは異なった価格で取引がおこなわれた場合に、通常の価格で取引がされたものとみなして課税されます。
この制度の対象となる国外関連者とは、法人と特殊な関係を持っている者のことで、50パーセント以上の株式を保有されている国外の法人などが該当します。
その他に、実質的な支配関係がある外国の法人なども国外関連者です。
こうした制度を詳しく知っておくことで、正しい納税が可能になります。