税収の確保を推進するための制度
移転価格税制という言葉は知っていても、制度の具体的な内容は知らない人も多いでしょう。
複雑な制度ですが、シンプルに表現すると日本における税収の確保を強化するための制度です。
これが適用されてしまうと、想定をはるかに上回る追徴税額を請求されることもありえます。
日本の企業が海外に子会社を保有している場合、人為的に取引価格を変更することが珍しくありません。
なぜなら、日本よりも税率が小さな国に所得を移したほうが納める税金がトータルで安く抑えられるからです。
もちろん、これは日本にとって好ましいことではなく、多くの企業が実施すると税収は一気に下がってしまいます。
そのような状況になることを防ぐために、移転価格税制が導入されることになりました。
その起源は1986年にまでさかのぼりますが、大企業特有の制度だと見なす風潮が強く、移転価格税制は長らく中小企業には実質的に無視されてきたという経緯があるのです。
身内びいきを抑制することも目的の一つ
別の見方をすると、移転価格税制は身内びいきが起こらないようにする制度ともいえます。
この制度が正常に機能していると、自社と無関係の第三者と取り引きする場合も、子会社と取り引きするときと同じ価格が適用されます。
つまり、独立した企業間の価格で取引したように見せかけることは不可能です。
また、ローカルファイルの提出が求められることも、その概念がベースにあるからです。
あくまでも同じルールで取引していることを明示できなければ、処罰の対象になることも十分にありえます。
海外移転を伴う場合、国際課税という課題から逃れることはできません。
少なくとも日本側はそのように規定しています。
日本の親会社が意図的に販売価格を調整することで、二国間における利益配分も変更されるため、国として監視を強化しなければなりません。
移転価格税制はその基盤として不可欠な存在であり、グローバル化に際してその役割は大きくなる一方です。
まとめ
移転価格税制がどのような制度か分かったら、すぐにでも適切に対処することが大事です。
それを怠っていると、企業グループのさまざまな部門で課税額が上がるような事態になりかねません。
さらに、移転価格税制に相当する制度が対象国にも存在するケースもあります。
この場合は両国のルールを正しく把握しなければならず、さらに時間がかかることになるでしょう。
したがって、自社が対象だと判明した場合、少しでも早く取りかかることがポイントになります。